建築実例
-
家族構成ご夫婦+1人
-
所在地東海市
-
建築費3,000~3,300万円
-
延床面積86.94㎡(26.29坪)
-
UA値0.41W/(㎡・K)
-
C値0.2㎠/㎡
描いた線が、境界となる
生じた ①内外の、 ②空間の、 ③用途的な境界の全てを、
あえて不明確に計画することで、豊かな生活空間を追求。
土間空間を中心にリビング、ダイニングキッチン、洗面脱衣などあらゆる生活動線を緩やかにつなぐ。
さらに吹抜けを介して間仕切りのない2階の空間とのつながり、軒下の外部空間や庭・家庭菜園へと明確な境界線をつくることのない曖昧な空間を連続させることで空間の広がりをつくりだしていく。
内と内、内と外、外と外。全ての境界線が曖昧かつ多様な生活のシーンが広がっていく。
建築家/田辺 真明(たなべ まさあき)
1972 愛知県生まれ
1996‐2003 石川設計綜合企画 設計業務
1998 東海工業専門学校 夜間部 建築工学科 卒業
2003‐2013 地元工務店勤務 設計業務
2013 田辺真明建築設計事務所 創業
2021 田辺真明建築設計事務所株式会社 設立
土間でつながる家
親族が所有していた畑を譲り受けたことで、土地の記憶を受け継いだ住まいを計画されたご夫婦。
庭の畑、土間、リビングのつながりを重視した「土間でつながる家」をテーマに、100年経っても街の風景となる、普遍的な美しさをもった住居を建てたいというご要望をいただきました。
これらを踏まえて建築家が設計したのは、軒下に大きなスペースと玄関に広い土間を配置しつつ、家の中の空間を仕切るドアはトイレと脱衣室の2つしかない、大きなワンルームの家でした。1階中央に土間から続く大型パントリーやクローゼットを設けることで、空間が仕切られ、玄関からの視線を遮りながら回遊できるように工夫されています。
no LDKの家
日々の生活のうえで憩いの場は1階中心で、2階はプライベートなやすらぎの場として、吹抜けで緩くつなぐ。変わっていくライフステージにあわせて仕切りすぎないプランニングを実現。主寝室とスタディスペースがひと続きになっている空間は、将来、お子さまの成長に合わせて壁を作り、個室に変化させることができるようになっています。何部屋という考え方でなく、どのように場を共有していくか、今の使い勝手と、5年後、10年後の使い勝手も想像された、このご家族のためのプランです。
ウェブマガジン AND ARCHI
こちらの住まいを設計した田辺真明氏が、実際に建物を訪ね、建築家ならではの発想や工夫について紐解きながら解説した記事が「ウェブマガジン AND ARCHI」に掲載されました。
▷「AND ARCHI」記事の閲覧はこちら
玄関アプローチは平滑なモルタルですべて覆ってしまうのではなく、ナチュラルな景観を保ちたいというご要望を受け、コンクリートに砂利を混ぜて施工する「洗い出し」仕上げを採用。
縁側のある家のように、季節と人や場所の繋がりを大切にしながら暮らす。
この軒下は、LDKにつながる土間とフラットに設計されており、屋内と屋外をつなぐ空間として機能するとともに、屋外を感じながらくつろいだり、自転車のメンテナンス、DIYを行うなど、多目的に使える空間となっています。
上がり框(かまち)に腰かけながら、揺らめく炎を眺められる薪ストーブ。
土間は薪を保管したり、庭の畑で採れた野菜を一時的に置いたり、家の内部にありながら屋外のような使い方もできる、柔軟な空間です。
左官職人がモルタルを金鏝(かなごて)で塗り上げた滑らかな仕上がりは、見た目が美しいだけでなく、砂や炭などのゴミが掃きやすく掃除しやすいなる利点があります。
また、上部は吹抜けで、広さ以上の開放感と明るさが感じられます。
ダイニングキッチンをリビング以上に家族のコミュニケーションの場として考えられているご夫婦。
キズや色の変化を楽しみながら使っていたダイニングテーブルと、それに合わせてオーダーした作業台を一直線に配置。親子や夫婦でいっしょに料理できる広い作業台は、人が集まった時はテーブルとして利用します。
キッチンもガスオーブンやダストボックスなどが収まるよう設計された造作キッチン。熟練の家具職人が木と道具と向き合い、美しい造形と手触りの良い質感を大切にしながら製作されています。
シンプルな深底シンクを使った造作洗面台は、シンクの幅が広く、二人並んで使用できます。
タオル掛けや引き出しの取っ手は経年変化を楽しめる真鍮製を採用しています。
ひとつながりの開放的なリビングは、家族で過ごすことのできる共有フリースペースとして利用されます。
鉄骨階段は、できるだけ存在感をなくした浮遊感のあるデザインにしたいという施主様のご要望からササラ(階段の段板を支える材)を細くした特注の階段です。1-2階を上下する際にも家族の気配がわかるよう、キッチンやリビングから見える位置に階段を設置しています。
2階北側の落ち着いた場所にスタディスペースを配置しました。
床材と同じオーク材でつくったカウンターテーブルは、家族で一列に並んで仕事したり勉強したり、共通の時間を楽しめます。また、つくりつけでなく可動式にしているので、将来的な模様替えにも対応できる形にしています。
現在、2階は夫婦の寝室とこども部屋(スタディスペース)を一体空間とし、将来は必要に応じて家具や間仕切りで分けられるように設計されています。
出産、子供の成長や独立など、ライフステージによって家族の状況は変化していきます。そういった変化をあらかじめ想定して設計することで、その時々により空間を最大限に利用できます。
建築家は設計を始める前に敷地を見て、建物と植栽のバランスを見ながら住居の設計や庭の造園計画を行います。
生活を営む内部空間と、公共の外部空間をどのように結ぶか、「土地や周辺環境を含めて住まい全体を計画する」ことを大切にされていた施主様の想いを叶えています。