コラム

2022.05.30

知っておきたい平屋の落とし穴

知っておきたい平屋の落とし穴

高さが抑えられつつひろがりのある空間、上下運動がないので、年をとってからも安心に暮らせる、など魅力のある平屋の需要が高まりつつあります。
ただ、すべてがいいところばかりではありません。
今回はそんな平屋に憧れを抱いている方に、家づくりを始める前に知っておいていただきたいことをお話します。

平屋の土地

まずは土地探しから家づくりを始める方にとって平屋はそれなりにハードルが高くなります。当たり前ですが2階建てに比べると土地に占める割合が増えるため、仮に30坪の平屋とした場合、駐車スペースなどの空きスペースも考えるとおおよそ60-70坪程度の土地面積があると余裕をもってプランニングができると思います。ただし、土地の坪単価にもよりますが、坪25-30万円くらいを想定とすると1,500-2,100万円くらいの範囲での土地価格になってくると思いますので、資金計画上の土地へのバランスも要注意です。

河合工務店 平屋

平屋のコスト

次に、一番わかりやすいのがコスト面。2階建ての方が高いのでは、と思われる方も多いですが、一般的に形状、仕様等の条件が同じで建物面積も同じ場合、平屋の方がコストは高くなると言われています。理由は「屋根面積」と「基礎面積」が増えるためです。
木造住宅も足元は鉄筋コンクリートでつくられているため、特に基礎工事のコストボリュームは建築工事全体でも大きいです。(5-7%程度)
ただし、2階建てにしないことで階段まわりの面積が減ることで省スペース化を図ることもできるので、単純にコストが2倍になることはなく、目安として1.2倍~1.3倍程度として捉えていただけるとよいかと思います。

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平屋の採光

また、意外と難しいのが採光面。
これは周辺環境によるところにも多いですが、南面に面する部分が多い土地にはセオリーとして、居室は南面配置することを手掛かりとします。しかし、密集地でなかなか日が入りにくく、また南北に長い土地の場合には東、西、北側からの採光も考慮しなければなりません。特に建物の真ん中部分に光が不足することもよくあります。その場合はプランを行う際の設計力が求められます。特に窓の位置や屋根・建物形状にも工夫が求められます。
また、高さがない分、室内からの視線が1階部分のみで低くなりがちなので、窓の高さや形状の確保の仕方も重要になってきます。

【平屋の採光:参考事例】

例えば、こんな場合。こちらは東西に長い形をした敷地です。
南北の隣地境界線から隣家が接近して建っており、そのままだと非常に採光面で不利なので、プランの中で解決策を探りました。

河合工務店 平屋 プラン

東面は庭から、西面は駐車スペースから採光確保は可能だが、建築可能な範囲にそのまま建物を配置してしまうとどうしても中心部分あたりの採光が難しくなってしまいます。

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そこで、あえて建物部分をくぼませて中庭を設けることで、中庭に面した居室に採光が可能になります。

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結果として中庭を設けることでプライバシーを確保した屋外スペースも生まれて、内外をつなぐ十分に明るい空間になりました。

実際の建築実例はこちら

このように、周辺環境の読み解きはプランニングを行う際にとても重要な意味を持ってきます。間取りはプランニングの一側面です。家族の要望を汲むのはもちろん、外とのバランスを考えなければなりません。

平屋の動線

さらに、部屋数や床面積のボリュームが大きい場合、水平動線が長くなりがちなので
いかに動線をコンパクトにまとめつつ、空間にひろがりをもたせられるかが重要になってきます。ただ部屋をつなぐだけで廊下面積が比例して大きくなるだけのプランはもったいないので、回遊動線がとれるような空間配置などをあわせて考えると可能性はどんどん広がっていくと思います。

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平屋を考えている方へ

一見すると、平屋のデメリットばかりお伝えしているように見受けられるかと思いますが、平屋を否定しているわけではありません。注意点をクリアにすることで、平屋の可能性はまだまだひろがっていくと思います。平屋は2階部分の荷重がないため耐震性・安全性を確保しやすいことや、上下階がないことなど、長く安心して住まうためのメリットもたくさんあります。その土地のポテンシャルを引き出すうえで、大事なプランニングができること、さらには建築会社と一緒に土地を探すことも有効だと考えます。

いかにご家族のご要望となぞらえて解決していくかも心地よい空間をつくる醍醐味だと思います。これから平屋を考えていく方にとっての参考にして頂ければと思います。