コラム
【イベント後記】LIVE座談会シリーズ 建築家 の 〇〇力2 ~住宅性能の向こう側~
去る2024年3月10日(日)に「LIVE座談会シリーズ 建築家の〇〇力2」を行いました。
※記事アップがだいぶ遅くなったのはご容赦ください。。。
今回のテーマは【住宅性能の向こう側】と題して、性能の数値だけでなく、家の快適性について多角的に議論してみようという考えです。今回は豪華に3名の建築家の先生にお越し頂きました。
今回ご参加頂いたのは、、、
まず、お一人目!
新潟県から飯塚一樹先生(株式会社イイヅカカズキ建築事務所)
続いて、長野県から中田啓予先生(一級建築士事務所ナカタヒロヨスタジオ)
最後に、東京都から中嶋浩平先生(株式会社澤野建築研究所)
と異なる温熱地域による3人の先生によって地域特性などの話を交えてたくさんお話頂きました。
まず、【前半パート】は
~住宅環境に必要な性能スペックを考えよう~
と題して、温熱地域ごとの特性を踏まえた性能スペックを考えることにしました。
話題としては、、、
・そもそもUA値とC値だけで大丈夫?
・最低限必要な性能スペックってどこまで?
・そもそも快適性って何?
・それぞれの地域ごとにどんな違いがあるの?(4と5地域、6地域)
・性能の落とし穴ってどんなことがあるか?
などなどを、はじめは簡単な性能指標の振返りを交えて、徐々にディープな話にシフトしていきました。
(参加者の方が着てみえたダウンジャケットを例に気密・断熱についての説明する中嶋先生)
主なトピックをいくつか、、、
・C値は0.5以下にすると換気がうまくまわる(飯塚先生)
・UA値の数値上劇的に改善しようと思うと、ポイントは屋根だと思う。特に夏の日射を受ける屋根の影響は大きい。(中島先生)
・全棟気密測定が基本。ゼロから性能を理解してもらって現場に反映させることが大事(中田先生)
・考え方としてはまずサッシ。窓からの熱損失を考えるとはじめはサッシの性能向上が必須。(中田先生)
・同じ面積の場合、平屋の方がUA値は良い数値が出る傾向にある。断熱された屋根と基礎の部分が窓よりも値がよいので、その面積が多い平屋はよい数値がでる傾向にある。(中田先生)
・涼しさの体感で言うと、重要視しているのが換気ですね。(飯塚先生)
・性能が良くなれば良くなるほど、冷たい外気がダイレクトに入ってくる第3種換気よりも第1種換気がおすすめ(飯塚先生)
・省エネ的には第3種の方が換気扇ひとつで済むので有利だと思うが、暑すぎる夏や寒すぎる冬のことを考えると熱交換のできる第1種の方が効果的だと思う。換気扇の電気代は少なくても結局空調するエネルギーが増えてしまうと一概にいいとも言えない。(中田先生)
・断熱が効いてて逃げにくい環境だと気流も大事な快適指標になりますね。(中嶋先生)
・地域によってちょっと違うんですよね。例えば、新潟は4・5地域、長野は3・4地域として、特に寒い地域って日射量が少ないんです。年間の日射量が一緒なんですけど、夏に極端に多くて、冬に極端に少ないんです。窓の性能は言いに越したことがないんだけど、日射を取り入れることができるような地域だったら、そこまで考えないといけないかもしれない。(飯塚先生)
・パッシブデザインの考え方とUA値とかっていうのは、ちょっと矛盾することもあって、北の方で日射量が多くない環境だとやはり得た日射熱を逃がしたくない。だからトリプルサッシ、性能のいいサッシで逃がさないようにするという考え方になるんですけど、なるべく取り入れようっていうそういう自然の感じから言えば、入れる方を考えるか、出さない方を考えるかっていうので根本考え方が異なるんですよね。(中田先生)
・日射を入れることばかりを考えて軒のない家だと、熱が入りすぎてオーバーヒートして暑くてたまらない状態になってしまうことだってある。なので、住む方がどういう暮らしをしたいのかなっていうところを聞かないと、ちゃんとした設計の方針はきちできないんじゃないかと思うんですよね。(中田先生)
・着ているものによっても変わりますしね。いつもフリース着ている人と、半袖短パンみたいな人では快適性のモノサシも大きく変わってきますよね。(中田先生)
・熱が昼間入ってくる量と夜逃げていく量の収支のバランスで。入ってくるものが多ければ日射取得を獲得する方が有利でしょうね。南の窓を開けて大きく吹き抜けから光を入れましょうっていう時に、この6地域であれば感覚的には入れた方が有利に働くんじゃないかと思います。(中嶋先生)
・温熱の収支の考え方で、蓄熱って考え方ができるんじゃないかなと思っています。例えば土間とかは蓄熱量が多いのですがプランへの取り入れ方で感覚的にいい方向に働きそうだなと思うんです。(中田先生)
・(実例紹介①)玄関という概念がなくてリビングまで床は大谷石を貼ってあって、リビングの土間の上が吹抜になっていて、夜になって寒くなると熱を放射して温めてくれる。そんなことを考えています。(中田先生)
・(実例紹介①)エアコンでなくて、冬は薪を使ったボイラー室による暖房、夏は井戸水を利用したパネル式冷房にて気化熱で涼しくなる自然エネルギーを活用した暮らしの紹介。(中田先生)
・(実例紹介①)夏も土間がひんやりと洞窟のような涼しさ、エアコンによる気流も感じられないので、快適な環境をつくれている。(中田先生)
・(実例紹介②)2階の屋根を日差しを遮るために1.8m出している。パッシブデザインとして夏の日差しを遮って、冬は取り込むということをしている。風が南北に通って、1階に入った風が吹抜を介して2階の窓から抜けていく計画にしている。斜めの袖壁は夏場の日射面が南だけでなく東と西に当たる時間を考慮して、朝日と西日をカットするために出している。(飯塚先生)
・(実例紹介②)フローリングはスギです。スギってとても柔らかいんですね。空気をいっぱい含んでいるんで、断熱材的にはいかに動かない空気をつくるかなんで、いっぱい空気を含んで柔らかいので、少しでも暖かくなるようにしました。(飯塚先生)
・体感温度と室温は違っていて、体感温度は「室温と表面温度の平均値」で表すんですけど、壁からの放射や空気の流れというものを意識すると実感は変わってくると思います。(中嶋先生)
【後半パート】は
~性能を活かした設計術・実例紹介~
と題して、数字に表れない快適性を考えることをテーマとしました。
建築家3人の過去の河合工務店での建築実例を交えて、それぞれのプランの特徴と温熱スペックの確認、パッシブデザインの視点で見た時の解説をして頂きました。
そこで共通していたのは、パッシブデザインという共通認識はあれどそれぞれの土地・周辺環境の違いもあれば、そもそものご家族のライフスタイルの違いから用いられるデザインが本当に多種多様であること。この辺りは実際にKOMAKIショールームにて、模型等を見て頂きながら理解を深めて頂ければと思います。(この日も実際に模型をみてよりわかりやすく解説して頂く場面もありました。)
最後は河合社長からもひとこと。
普段から高気密・高断熱住宅をお届けしているがそこに建築家の豊かな発想のもと、本当の意味で安全・快適な住宅をつくれていること。直接、建築家の方々のお話を聞けてその知識・見識の深さといい家をつくるための熱量を垣間見えてとても楽しかったですとご満悦。
今後も建築家の魅力を感じて頂けるイベントを開催していきますので、乞うご期待!