家づくりの知識
全館空調システムのデメリットについて
全館空調システムをおすすめしない理由|設置箇所や具体的な課題も含めて詳しく解説
全館空調システムは、家全体の快適性を追求した設備である一方、導入に際して避けられないデメリットがあります。本コラムでは、システム設置に関する課題や、実際の使用例を交えながら、全館空調を採用する際の注意点と致命的なデメリットについて掘り下げていきます。
1. 全館空調のシステム構成と設置箇所が引き起こす課題
全館空調システムは、家全体をカバーする空調設備を設置する必要があります。その構成要素には以下が含まれます:
- 空調ユニット:大型の空調装置が必要。一般的には天井裏や専用のメンテナンススペースに設置。
- ダクト:各部屋へ空調を届けるためのダクトを、壁や床、天井に配管する。
- 吸気・排気口:室内空気を循環させるために各部屋に設置。
システム設置の具体的な課題
- 天井高が犠牲になる
ダクト配管を設置するスペースを確保するために、天井を下げる必要があり、部屋の圧迫感を感じることがあります。- 実例:名古屋市内で新築したFさん宅では、ダクトの通り道を確保するため、リビングの天井高を2.6mから2.4mに変更せざるを得ませんでした。設計段階で気づかなかった天井高の低下に不満を抱える結果となりました。
- 配管の長さとエネルギーロス
広い家の場合、配管が長くなることでエネルギーのロスが発生し、遠い部屋ほど空調効果が弱くなることがあります。これにより、家全体が均一に快適とは限りません。 - メンテナンスの困難さ
ダクトの清掃が定期的に必要で、ホコリやカビの蓄積によってアレルギー症状を引き起こすリスクがあります。また、配管が壁や天井の中に隠れているため、修理時には壁を壊さなければならないケースも。
2. システムの停止が引き起こす家全体の問題
全館空調の大きな特徴は、一つのシステムで家全体の空調を管理することです。この仕組みが快適性を提供する一方で、システムが故障すると家全体が影響を受けるというリスクがあります。
実例
豊田市で家を建てたGさんの家庭では、冬の真っただ中に全館空調のメインユニットが停止。原因は電力の過負荷による基板の故障でしたが、部品の取り寄せに1週間を要しました。その間、家全体が寒冷化し、各部屋に小型ヒーターを急遽設置する羽目になりました。
3. 室内環境の一括管理がもたらす快適性の偏り
全館空調では、家全体を均一な温度に保つことが基本ですが、部屋ごとの温度調整が難しく、住む人全員にとって快適な環境を作ることは困難です。
実例
- リビングで快適な23℃を保つ設定をすると、北向きの寝室では寒すぎると感じることも。東海市で全館空調を採用したHさんは、この問題を解決するために、個別のエアコンを追加設置しましたが、全館空調の初期費用を考えると「二重投資」になったと後悔しています。
4. 設置スペースが間取り設計に制約を与える
空調ユニットの配置
全館空調のメインユニットは、サイズが大きく、専用の設置場所を確保する必要があります。これは、延床面積が限られている場合に設計上の制約となる可能性があります。
- 実例:
春日井市で家を建てたIさんは、メインユニットを設置するために、収納スペースを削減することを余儀なくされました。また、点検口を確保するためにクローゼットの一部を犠牲にしました。
ダクトの通り道
ダクトを通すために壁や天井に配管スペースを設ける必要があり、その結果、間取りや収納計画が影響を受ける場合があります。
5. 気密性能が不十分な場合の非効率性
全館空調は高気密・高断熱住宅に最適化されたシステムです。しかし、気密性能が十分でない場合、空気が外へ漏れ、冷暖房効率が大幅に低下します。全館空調を導入する場合、住宅全体の性能も高めなければならず、これが追加費用として跳ね返ります。
実例
一宮市で建築されたJさんの家は、気密性能の測定値が想定以下で、全館空調を運用した際、期待した快適性を得られず、電気代だけがかさんだという事例があります。
6. ライフスタイルの変化に対応しづらい
全館空調システムは、設計時に家全体に組み込まれるため、後からの変更が難しい点もデメリットです。たとえば、将来的に間仕切りを増やしたり、部屋を増築したりする場合、全館空調のダクトや吸気・排気口の再設計が必要となり、大幅な改修費用が発生します。
実例
名古屋市内で家をリフォームしたKさんは、全館空調システムが大規模な改修の障害となり、システムを撤去して一般的な個別空調に切り替えることを選択しました。この際、システム撤去に50万円以上の追加費用が発生しました。
代替案の検討
全館空調システムに疑問を感じる場合は、以下の代替案を検討することで柔軟な住環境を構築できます:
- 各部屋ごとのエアコン設置
個別空調により、必要な部屋だけ冷暖房を使うことで、コスト削減と効率的な温度管理が可能です。 - 床暖房+個別エアコンの併用
リビングに床暖房を導入し、その他の部屋はエアコンで補完することで、初期費用やランニングコストの削減が期待できます。 - 全館空調と小型エアコンの併用
全館空調のデメリットをカバーするために、補助的に小型エアコンを導入する方法も検討できます。
最後に
全館空調システムの導入には、大型設備の設置箇所や配管計画など、多くの制約や課題が伴います。また、初期費用、メンテナンス、ランニングコストの高さに加え、故障時のリスクや住まい方の自由度を犠牲にする場合があることも忘れてはなりません。
最適な住環境を手に入れるためには、ライフスタイルや予算、家族構成に応じて柔軟に選択肢を検討することが重要です。全館空調の導入を検討している方は、設置の課題や長期的なコストを十分に理解した上で判断するようにしましょう。
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