家づくりの知識

2024.11.17

日本の断熱基準について

日本の断熱基準は低すぎる?国際比較で見た「断熱後進国」の実態

日本の断熱基準は、今なお他の先進国に比べて低く、住宅の省エネ性能を最大限に発揮するには不十分とされています。国際比較をすると、日本は「断熱後進国」とも言われることがあります。例えば、EU諸国では「ほとんどエネルギーを使わない家づくり」が常識化しており、新築時に高断熱仕様が求められています。具体的には、スウェーデンやドイツでは、寒冷地でも暖房費が最小限で済むほどの断熱性能が義務付けられ、日常生活の光熱費を抑え、快適な居住空間を維持する工夫が施されています。

一方、日本では近年になってようやく「断熱等級4」の基準が義務化されようとしていますが、これですら他国と比べると平均的なレベルに過ぎません。たとえば、ドイツの「パッシブハウス基準」に適合する住宅では、年間の暖房エネルギー消費量が15kWh/㎡以下と極めて低く抑えられています。これに対して、断熱等級4レベルの住宅は、ドイツでは断熱性能が不十分とされてしまうほどの基準なのです。

断熱性能が低いことによる影響:家庭の経済と健康に直撃

日本の断熱基準が低いままだと、家庭の経済負担や住まい手の健康に直接的な影響が生じます。ここでは、具体的な生活への影響を掘り下げてみましょう。

例1: 光熱費の増加と家計への影響

断熱性能が低い住宅に住んでいる場合、冬の寒さや夏の暑さをしのぐためにエアコンやヒーターの稼働時間が増え、その分光熱費が高額になります。関東地方に住むDさん夫婦のケースでは、築20年の住宅に住んでおり、冬場は特に寒さが厳しく、電気代が毎月3万円以上かかっています。エアコンと電気ヒーターを合わせて使用していますが、断熱性能が低いため、暖かさがすぐに逃げてしまうのです。そのため、エアコンを入れてもなかなか部屋が暖まらず、家計に大きな負担がかかっています。

これが高断熱住宅であれば、たとえ同じエアコンを使ったとしても暖かさが逃げにくく、わずかな暖房で快適な室温を維持できるため、光熱費も抑えられるでしょう。例えば、北海道に住むEさん一家の住宅は、HEAT20 G2基準に適合しており、冬場の暖房費は月1万円ほどで済んでいます。このように、断熱性能の差は家庭の経済負担にも大きく影響するのです。

例2: 健康リスクの増加(ヒートショックや喘息)

断熱性能が低い住宅では、冬場にヒートショックが発生しやすくなります。ヒートショックとは、暖かいリビングから寒い浴室やトイレに移動した際の急激な温度変化により、血圧が急激に変動し、心臓や血管に負担がかかる現象です。特に高齢者が多く住む家では、このヒートショックによる健康被害が深刻で、毎年ヒートショックに関連する事故も報告されています。

実際に、埼玉県のFさん家族では、冬場に浴室の寒さが原因でヒートショックのリスクを感じています。Fさんの母親は血圧が高く、浴室に行くたびに寒さで体が震えることが多いため、暖房機器を浴室にも取り入れましたが、それでもヒートショックのリスクは完全には取り除けません。これが高断熱住宅であれば、室内の温度差が少なくなり、ヒートショックのリスクも大幅に軽減されるでしょう。

また、断熱性能が低いと室内の湿度管理が難しく、特に冬場に空気が乾燥しやすくなります。これにより、喘息やアレルギー症状が悪化するケースも少なくありません。千葉県のGさん一家は築年数が経った住宅に住んでおり、冬場はリビングが乾燥しやすいため、加湿器をフル稼働させていますが、それでも部屋全体が潤うことは難しいと感じています。断熱性能の高い住宅であれば、湿度が保たれやすく、健康リスクも軽減されるでしょう。

断熱性能が長期的な資産価値に及ぼす影響

断熱性能は住宅の資産価値にも大きな影響を及ぼします。現在、日本でも断熱性能の高い住宅が普及し始めており、将来的に断熱性能が低い住宅は中古市場での評価が低くなる可能性があります。欧州では、エネルギー効率が住宅の資産価値に直結しており、高断熱住宅はリセールバリューが高いことが一般的です。

例えば、ドイツやフランスでは、住宅のエネルギー消費量や断熱性能を示す「エネルギーラベル」が義務付けられており、高性能な住宅は中古市場で高値で取引されています。一方、日本ではまだエネルギーラベル制度は普及していませんが、今後は省エネ性能が資産価値に大きく影響する時代が来ると予測されています。これから家を建てる、またはリフォームする際には、断熱性能の高い仕様に投資することが、長期的な資産形成に繋がるでしょう。

断熱性能を高めるための具体的な方法

断熱性能を高めるためには、以下のような対策が効果的です。

1. **高性能な断熱材の使用**:壁や床、天井に高性能な断熱材を使用することで、住宅全体の断熱性を高めます。セルロースファイバーやウレタンフォームなどの断熱材は、一般的なグラスウールに比べて性能が高く、温度差を軽減しやすくなります。

2. **高性能窓の導入**:窓は熱の出入りが最も多い部分です。高性能な複層ガラスやトリプルガラスを使用することで、窓からの熱の出入りを最小限に抑えます。また、窓枠に樹脂サッシを採用することで、さらに断熱性が向上します。

3. **断熱ドアの設置**:玄関ドアは、室内外の温度差が生じやすい場所です。断熱性能の高い玄関ドアを選ぶことで、家全体の断熱性能が向上します。

4. **計画換気システムの導入**:高断熱住宅では計画換気が重要です。第1種換気システムを導入することで、外気を効率的に取り込みながら室内温度を保ち、快適な環境を維持できます。

最後に:断熱性能の高い住宅を選ぶべき理由

これらの具体例からもわかるように、断熱性能の高い住宅は快適性だけでなく、家計の負担軽減や健康面のリスク軽減、そして長期的な資産価値の保全に役立ちます。現在の日本の住宅市場では、まだ断熱性能が重視されていない場合もありますが、断熱性能が低いと長期的な負担が増えるだけでなく、資産価値が低下するリスクも考えられます。

今後、日本でも断熱基準がさらに厳格化され、エネルギー効

率の高い住宅が求められる時代が来るでしょう。住宅を購入する際やリフォームを検討する際には、ぜひ断熱性能に注目し、将来にわたって快適でエコな暮らしができる家を目指してみてはいかがでしょうか。

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