家づくりの知識
省令準耐火住宅
省令準耐火住宅とは? その概要と重要性
省令準耐火住宅は、住宅金融支援機構が規定する防火性能基準に準拠した住宅で、通常の木造住宅に比べて火災への耐性が高いことが特徴です。万が一の火災時に隣接する建物や住宅内部への火の拡大を遅らせ、家族や財産を守るための仕様が施されています。
通常の木造住宅と比べて追加の建築コストがかかる点があるものの、火災保険や地震保険の割引が受けられるため、長期的には非常に経済的です。また、安心して暮らせる住宅を求める家族にとって、省令準耐火住宅は強い味方となります。
省令準耐火住宅の追加工事とコスト比較
1. 外壁と軒裏の防火構造
省令準耐火住宅では、外壁や軒裏に耐火性能を持たせる必要があります。これは、隣家で火災が発生した際に自宅への延焼を防ぐためです。一般的な木造住宅では、防火性能の低い素材が使用されることが多いですが、省令準耐火住宅では防火性能が求められるため、次のような材料を使うことが必要です。
- 材料の選定例:窯業系サイディングボード、または火に強い塗り壁材
- コスト比較:通常の木造住宅の場合、標準的なサイディング材の外壁工事にかかる費用は約80~100万円ですが、省令準耐火住宅の場合は、耐火性能を備えた素材を使用することで、100~120万円程度に増えるケースが多いです。
- 追加費用:20~40万円程度
2. 耐火性の高い屋根材の使用
屋根材も火災の拡大を防ぐ重要な要素です。一般的な住宅では木製や安価な金属屋根材が使われることが多いですが、省令準耐火住宅では、不燃性の高い屋根材が使用されます。
- 材料の選定例:スレート屋根、または瓦屋根(耐火性のあるもの)
- コスト比較:一般的な金属系屋根材を使う場合、施工費用は約70~80万円ですが、スレート屋根や耐火瓦を使用する場合、80~100万円ほどになることが多く、追加費用は10~20万円程度です。
3. 防火サッシ・防火ガラスの設置
火災が発生すると、窓ガラスが熱で割れたり、火の粉が入ったりすることがあります。省令準耐火住宅では、このようなリスクを軽減するために、防火サッシや防火ガラスの使用が推奨されます。
- 材料の選定例:防火サッシ、防火ガラス(耐火性強化ガラス)
- コスト比較:通常の住宅では、一般的なサッシと窓ガラスの設置費用は1か所あたり約10万円ですが、防火サッシ・防火ガラスを使用すると13~15万円程度になります。
- 追加費用:1か所につき3~5万円程度
これらをすべての窓に設置する場合、例えば10か所の窓で30~50万円の追加費用が発生することになります。
4. 内部の壁・天井の耐火性能強化
省令準耐火住宅では、室内で火災が発生しても隣接する部屋に火が広がりにくいよう、壁や天井に耐火性能を持たせます。具体的には、石膏ボード(約15分以上の耐火性能がある)を使用します。
- 材料の選定例:厚手の石膏ボード
- コスト比較:一般的な木造住宅では、通常の石膏ボードで壁と天井の工事を行うと約50万円程度ですが、耐火性能のあるボードを使用すると、60~70万円になることが多く、10~20万円の追加費用が発生します。
5. ファイヤーストップ材の設置
火の通り道を遮断するため、壁や天井内の空洞部にファイヤーストップ材を設置します。これにより、火災時に火が建物内部を通って広がるのを防ぐことができます。
- 材料の選定例:耐火シートやパテ
- コスト比較:通常の木造住宅にはこうした素材は設置しませんが、省令準耐火住宅では10~20万円ほどの費用がかかります。
省令準耐火住宅にした場合の総コスト比較例
標準的な木造住宅において、総建築費用が3,000万円とした場合、省令準耐火住宅の仕様にすることで、追加費用は約100~150万円ほどかかることが一般的です。つまり、3,100万~3,150万円程度が見込まれると考えられます。
項目 | 通常の木造住宅の費用 | 省令準耐火住宅の費用 | 追加費用 |
---|---|---|---|
外壁・軒裏の防火構造 | 80~100万円 | 100~120万円 | 20~40万円 |
屋根材 | 70~80万円 | 80~100万円 | 10~20万円 |
防火サッシ・ガラス | 100万円(10か所) | 130~150万円 | 30~50万円 |
内部壁・天井の耐火性能 | 50万円 | 60~70万円 | 10~20万円 |
ファイヤーストップ材 | なし | 10~20万円 | 10~20万円 |
合計 | 3000万円 | 3100~3150万円 | 100~150万円 |
火災保険料のメリットと長期的なコスト削減
火災保険料の面では、省令準耐火住宅の強みが際立ちます。一般的な木造住宅と比較して火災リスクが低いとみなされるため、保険料の割引が適用され、30~50%の軽減が期待できます。
例えば、通常の木造住宅の火災保険料が年間5万円と仮定すると、省令準耐火住宅では2.5~3.5万円ほどに抑えられる可能性があり、毎年1.5~2.5万円の節約が見込まれます。
- 30年の節約額:年間2万円の節約とすると、30年間で約60万円の保険料を削減することができます。これは、省令準耐火住宅の追加費用の大部分を相殺する効果があります。
最後に:省令準耐火住宅を選ぶメリット
省令準耐火住宅は初期の建築コストが上がる一方、火災保険料の軽減や火災時の安全性、資産価値の保全というメリットがあり、長期的には非常に経済的です。火災リスクがある都市部や隣家との距離が近いエリアでは、特に有効な住宅仕様といえます。