家づくりの知識

2024.11.07

美しい土間空間の仕上げ セレクト5選

土間空間の利便性と空間演出

昨今、土間空間はその独特な利便性とデザイン性で再注目されています。かつての日本家屋では、外と内の境界をつなぐ場所として活用されていた土間は、現代の住宅でも多様な用途で取り入れられています。玄関から庭へとつながる空間や、ガーデニングやDIYスペースとしての活用、さらにはペットの遊び場やお子様の遊びスペースなど、柔軟な使い方ができるのが土間空間の大きな魅力です。
また、デザイン面でも土間は特別な役割を果たします。土間の素材や仕上げ方を工夫することで、家全体の印象を大きく変えられるのです。例えば、モダンな空間を目指すなら金ゴテ仕上げのモルタルやスレート板、ナチュラルで温かみのある空間にしたいなら洗い出し仕上げや自然石など、素材や仕上げ方により空間演出が広がります。土間空間はインテリアとエクステリアをつなぐ重要な場所であり、生活に必要な実用性と家の美観を引き立てる空間演出の役割を同時に果たしています。以下ではそれぞれのメリット・デメリットも交えてお伝えしていますので、今後のデザイン仕様選定の参考にしてみてください。

①モルタル金ゴテ仕上げ

※モルタル(砂、砂利とセメントを混ぜたもの)を金鏝(平らな鏝)でおさえて仕上げたものです。

メリット
• 美しい光沢感:表面が平滑でつやがあり、クールでモダンな印象を与えます。
• 清掃のしやすさ:表面が滑らかなので、ほこりや汚れが溜まりにくく、日々の掃除も比較的容易です。
• 高い耐久性:しっかりと仕上げることで、耐久性も高く長持ちします。
デメリット
• 滑りやすい:特に水に濡れると滑りやすいため、玄関や屋外に使用する場合は注意が必要です。
• ひび割れの可能性:表面が硬いため、経年劣化や振動によってひび割れが発生することがあります。
• 冷たさ:触感が冷たいので、素足で過ごすことが多い空間やさらに寒い空間にはやや不向きです。

②モルタル刷毛引き仕上げ

※モルタル(砂、砂利とセメントを混ぜたもの)を金鏝(平らな鏝)でおさえた後、刷毛や箒で模様付けして仕上げたものです。

メリット
• 滑りにくさ:ザラザラした表面に仕上げることで、滑りにくく水はけも良いため、屋外やガレージに適しています。
• 独特のデザイン性:刷毛の模様が独特で、手作業の温かみを感じるデザインができます。
• 水はけの良さ:細かな凹凸が水を分散し、乾燥しやすいため、湿気の多い場所でも安心です。
デメリット
• 清掃が難しい:凹凸が多いため、ほこりや汚れが入り込みやすく、掃除には手間がかかります。
• 施工のムラ:職人の技術によって仕上がりに差が出やすく、統一感を出すには熟練の技術が必要です。
• 冷たさと硬さ:他のモルタル仕上げ同様、冷たく硬い触感なので、リビングのようなリラックス空間には不向きです。

③モルタル洗い出し仕上げ

※モルタル金鏝と同様に仕上げした後、(砂利は仕上の豆砂利を使う)表面のセメントが固まる前に除去することで表面の骨材をあらわしにすることです。

メリット
• 自然な風合い:砂利や小石の粒が表面に現れ、自然な風合いが楽しめます。和風建築やナチュラルなデザインにもよく合います。
• 耐久性:硬い石材を使用しているため、非常に耐久性が高く、長期的に使える仕上げです。
• 汚れが目立ちにくい:表面に凹凸があるため、多少の汚れは目立ちにくく、メンテナンス性に優れています。
デメリット
• 手間のかかる施工:施工の工程が複雑で、技術が必要なため、費用が高めになる場合があります。
• 汚れの蓄積:凹凸によりほこりが溜まりやすく、こまめな清掃が必要です。
• 硬い触感:小石が露出しているため、裸足で歩くと硬さを感じやすいです。

④タイル仕上げ(磁器質タイル)

メリット
• 高い耐久性:硬く吸水性が低いため、外部での使用にも適しており、長期間美しい状態を保てます。
• 汚れに強い:表面が硬いため、汚れが染み込みにくく、清掃がしやすいです。
• 均一な仕上がり:色ムラが少なく、統一感のあるデザインが可能です。
デメリット
• 施工費用が高め:焼成温度が高く、製造コストがかかるため、他のタイルに比べて費用が高くなりがちです。
• 冷たい触感:硬く冷たい触感があるため、冬場などは冷たさを感じやすいです。
• 滑りやすい場合がある:表面がツルツルしているものは滑りやすく、場所によっては滑り止めが必要です。

⑤自然石(スレート板)仕上げ

※自然石は他にも大谷石や御影石など用いられる種類は様々です。

メリット
• 高級感と自然な美しさ:スレートの質感や色合いが独特で、空間に上品さと自然美を与えます。
• 耐久性:天然の岩石で作られているため、非常に硬く耐久性が高いのが特徴です。
• 防火性能:自然素材であるため、耐火性もあり、安全性が高いです。
デメリット
• 高コスト:天然素材で加工が難しいため、他の素材に比べてコストが高くなる傾向があります。
• 重さ:石材は重いため、施工時にしっかりとした基盤が必要です。
• 滑りやすさ:表面が滑らかでツルツルしているものが多く、屋外や水がかかる場所では滑り止めが必要です。

土間空間の価値と理想的な仕上げの選び方

各仕上げのメリットとデメリットを踏まえると、使う場所やデザイン性の好みによって適した仕上げ方法を選ぶことが重要です。屋外には滑りにくい刷毛引き仕上げや洗い出し仕上げ、屋内には温かみのある陶器質タイルや自然石など、それぞれの特性に合わせて選択することで、デザイン性と機能性の両方を兼ね備えた空間が実現します。土間空間は、住宅にとって単なるスペース以上の価値を持っています。その多機能性とデザイン性により、家全体の雰囲気を一新したり、暮らしの利便性を向上させたりする効果があるため、現代の住まいにおいても取り入れられることが増えています。適切な仕上げ方法を選ぶことで、土間空間の用途に合った快適性とデザイン性を引き出すことができます。例えば、掃除のしやすさや滑りにくさが重要であれば、刷毛引き仕上げや磁器質タイルが向いていますし、自然の風合いを楽しみたい場合は自然石や洗い出し仕上げが理想的です。また、経年変化やメンテナンス性も考慮することで、長く愛着を持てる土間空間が実現するでしょう。土間空間は暮らしに温もりや利便性をもたらし、素材や仕上げ方によって様々な表情を楽しめる魅力的な場所です。この比較記事を参考に、ご自身のライフスタイルに最適な仕上げ方法を見つけ、理想の土間空間を実現してください。