家づくりの知識

2024.11.08

高気密・高断熱住宅と電気代

高気密・高断熱住宅が一般的な住宅に比べてどのように電気代の削減に寄与するかを、電気代のシミュレーションや実際の光熱費データも含めて具体的に見ていきましょう。


1. 高気密・高断熱住宅とは?

高気密・高断熱住宅は、住宅の気密性や断熱性を徹底的に高めることで、外気の影響を極力抑えた構造を持っています。これにより、冬場の暖かい空気や夏場の涼しい空気を効率的に保ち、冷暖房の効率を上げることが可能です。

具体的には、断熱材の厚みや窓ガラスの選定などにこだわりがあり、断熱材には高性能なウレタンフォームやセルロースファイバー、窓には複層ガラスやLow-Eガラスなどが使用されることが一般的です。また、隙間を徹底的に減らし、外部と室内の温度差をしっかりと保つ工夫がされています。


2. 普通の住宅との違い

一般的な住宅では、高気密・高断熱住宅と比べて断熱材の厚さが薄かったり、窓やドアの気密性が低いため、外気が入り込みやすい傾向があります。特に冬の寒い時期には、窓やドアから冷たい外気が入り込むことにより、室温を保つために暖房機器を長時間使用する必要があります。

また、夏の暑い時期には、外気の熱が室内に伝わりやすくなるため、冷房機器の使用頻度が増えます。その結果、一般住宅はエアコンやヒーターなどの電気代が増加するのです。


3. 電気代の違いについて

高気密・高断熱住宅が一般住宅に比べて電気代を削減できる理由は、エネルギー効率の違いにあります。以下、季節ごとの電気代のシミュレーションを元に、具体的に説明します。

冬場の電気代

冬の寒冷地での生活を想定した場合、高気密・高断熱住宅と一般住宅では、暖房にかかる電気代が大きく異なります。例えば、暖房を一日中稼働させた場合、一般住宅では外からの冷気が入り込みやすく、暖房をつけていても室温がなかなか上がりません。そのため、暖房機器を長時間稼働させる必要があるため、電気代が毎月3万円を超えることもあります。

一方で、高気密・高断熱住宅では一度暖房をつけて室温を上げれば、その温度が長く維持されるため、暖房を頻繁にオン・オフする必要がなくなります。例えば、同じ家庭で高気密・高断熱住宅に住むと、冬の電気代が毎月1万〜1万5千円程度に抑えられるケースもあります。これは年間で見ると数万円から10万円以上の違いにつながる可能性があります。

夏場の電気代

夏の暑さにおいても、一般住宅では室温が上昇しやすいため、冷房をフル稼働させる必要があります。特に直射日光が当たる窓が多いと、室温が上がりやすく、冷房の効きも悪くなります。そのため、冷房の設定温度を低くしなければ快適な室温を保てず、電気代が増加してしまいます。

高気密・高断熱住宅は、外気温の影響を受けにくいため、冷房を短時間稼働させるだけで十分に涼しさを維持できます。また、断熱材や高性能の窓によって日中の熱が入りにくいため、冷房の効率も格段に向上します。これにより、夏場の電気代も一般住宅に比べて大幅に抑えることが可能です。


4. 実際のデータで見る電気代の差

高気密・高断熱住宅と一般住宅の年間電気代を実際のデータで比較したケースを紹介します。

住宅タイプ 年間電気代(例)
高気密・高断熱住宅 約15万円
一般住宅 約30万円

この表からもわかるように、高気密・高断熱住宅では、年間を通して電気代が約半分に抑えられる可能性があります。このデータはあくまで例ですが、断熱性能が高いほど省エネ効果が高まることがわかります。特に、暖房・冷房が必要な季節では差が大きく出ます。


5. ライフスタイルと健康面の影響

高気密・高断熱住宅は、単に電気代を削減するだけでなく、居住者のライフスタイルや健康にも良い影響を与えます。

快適な住環境

高気密・高断熱住宅では、室温が一定に保たれやすく、急激な温度変化が少ないため、体感温度も安定します。特に冬場においては、暖房を消してもしばらくは室温が保たれるため、起床時や就寝時に極端に寒さを感じにくくなります。

健康面のメリット

急激な温度変化は体に負担をかけることがありますが、高気密・高断熱住宅ではそのリスクが軽減されます。また、乾燥しにくい環境を保つことができるため、冬の乾燥による風邪やインフルエンザのリスクも低減できるとされています。


6. 高気密・高断熱住宅への投資効果

高気密・高断熱住宅は一般住宅に比べて建設費用が高くなる傾向がありますが、長期的な視点で見るとその投資効果は大きいです。

初期投資と長期的なコスト削減

例えば、一般住宅を建てる際にかかる費用に比べて、高気密・高断熱住宅の建設費用は数十万円から数百万円高くなる可能性があります。しかし、前述のように電気代が年間で10〜15万円削減できる場合、10年から15年でその差額を回収できる計算になります。

補助金制度の活用

近年、省エネ住宅の普及を推進するための補助金制度が国や自治体で設けられており、高気密・高断熱住宅の導入が推奨されています。これにより、初期投資の負担が軽減され、より多くの家庭で高性能住宅の導入がしやすくなっています。


7. 環境負荷の軽減と持続可能性

高気密・高断熱住宅は電力消費を抑えることで、家庭からの二酸化炭素排出量の削減にも貢献します。

二酸化炭素排出量の削減

例えば、暖房や冷房のエネルギー消費を抑えることで、電力消費に伴うCO2排出が減少します。これにより、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えることができます。

持続可能な住環境

省エネルギーを意識した住宅づくりは、持続可能な社会づくりにも貢献しています。現在、エネルギー資源の枯渇や気候変動の問題が世界的な課題となっており、高気密・高断熱住宅の普及は、この課題解決に向けた一つの手段とされています。


最後に

高気密・高断熱住宅は、一般的な住宅に比べて、冷暖房にかかるエネルギー効率が高く、年間の電気代が大幅に削減できるだけでなく、快適で健康的な住環境を提供します。また、環境負荷の軽減や持続可能な社会の実現に向けた取り組みにも貢献しています。

住宅の選択肢として高気密・高断熱住宅を検討する際、電気代だけでなく、快適さや健康面でのメリット、さらに環境面での貢献も含めて総合的に考慮すると、その価値がより一層理解できるのではないでしょうか。