コラム

2024.10.25

建築士、設計士、建築家って何が違う?~メリット・デメリット~

家を建てるということは、多くの人にとって人生の中で最も重要な決断の一つですよね。新しい住まいを設計するにあたって、どの専門家に相談するかが、家づくりの成功を左右する大きな要素となります。しかし、よく耳にする「建築士」「設計士」「建築家」という言葉も、それぞれの役割や違いが明確でないことが多いかもしれません。どの専門家を選ぶかによって、家づくりのプロセスや最終的なデザイン、住み心地に至るまで、さまざまな要素が大きく変わります。
今回は、建築士、設計士、建築家という三つの専門家の違いについて、その役割や特徴をわかりやすくご紹介し、さらに、それぞれのメリット・デメリットも詳しく解説していきます。さらに、特に建築家が持つ独自の魅力に焦点を当てながら、家づくりにおいて建築家がどのような役割を果たすのか、また実際に依頼する際の注意点なども含めてご説明していきます。

1. 建築士とは
1.1 建築士の概要
はじめに「建築士」とは、日本における建築のプロフェッショナルであり、国家資格を持つ専門家です。建築士は、建物の設計や工事の監理を行う責任があり、法的に定められた基準を守りながら、安全で快適な建物を作り上げる役割を果たします。日本では「建築士法」という法律に基づいて資格が与えられ、建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士という三つの種類があり、それぞれの資格に応じて取り扱える建物の規模や種類が異なります。
• 一級建築士:一級建築士は、最も高度な資格であり、高層ビルや商業施設、公共施設などの大規模な建物の設計・監理ができる資格です。一級建築士は、その幅広い専門知識をもとに、どのような規模や用途の建物にも対応できるため、住宅だけでなく、広範囲にわたるプロジェクトにも携わることができます。特に、複雑な構造や安全性が求められる建物では、建物全体を設計・監理できる一級建築士の存在が不可欠です。
• 二級建築士:二級建築士は、主に住宅や小規模な建物の設計・監理を行う資格です。低層マンションや戸建て住宅など、住宅設計に強みがあり、日本の一般的な住宅プロジェクトにおいては、この二級建築士が活躍することが多いです。家族が暮らすための住まいを、機能性や居住性に配慮しながら設計し、法的な基準を守りつつ、快適で安心な空間を提供するのが二級建築士の役割です。
• 木造建築士:木造建築士は、木造建築に特化した資格です。日本の伝統的な住宅の多くは木造であり、木造建築士はその特性を活かしながら、木造住宅や木造施設の設計と監理を行います。木材の特性を十分に理解し、強度や耐久性を考慮しながら、自然素材を活かした温かみのある家づくりを提供するのが特徴です。木造建築は、その温かさと自然との調和が求められるため、木造建築士はそれを実現するための重要な存在です。
1.2 建築士のメリット
建築士に依頼する最大のメリットは、何よりもその信頼性だと思います。建築士は、国家資格を持っており、厳しい試験を突破してその能力を証明しています。そのため、建物の設計や工事監理において法的に適切な判断ができることが保証されています。また、建築士は、設計だけでなく、工事が設計図通りに進んでいるか、さらに法的に安全基準を満たしているかを確認する工事監理も行います。この監理があることで、施工ミスやトラブルが発生するリスクを大幅に軽減し、結果的に安心して暮らせる家を提供することができるのです。
さらに、一級建築士であれば、住宅に限らず、商業施設や公共施設といった大規模なプロジェクトにも対応可能です。そのため、規模に応じた柔軟な設計が行える点は非常に大きな強みと言えます。建築士が法的な知識と技術を活かし、建物が長期的に安全であることを保証してくれるため、安心して長く住むことができる家を建てることができます。
また、建築士はクライアントの希望に応じた柔軟な設計を提供することができます。家族の生活スタイルや将来のライフステージの変化に合わせた設計ができるため、長期的に見て快適で住みやすい住まいを実現することが可能です。家づくりの初期段階から建築士としっかりとコミュニケーションを取り、自分たちのライフスタイルや要望をしっかりと伝えることで、理想の住まいを形にしていくことができるでのではないでしょうか。
1.3 建築士のデメリット
一方で、建築士に依頼する際にはいくつかのデメリットも考慮しなければなりません。まず、建築士に依頼すると、コストが高くなる可能性があるという点です。特に一級建築士に依頼する場合、その報酬は比較的高額となることが多く、さらに大規模なプロジェクトでは設計費用や監理費用が増加することが予想されます。設計段階から工事監理までしっかりと行うため、それに見合ったコストがかかることを理解しておく必要があります。
また、建築士は法令や安全基準を重視して設計を行うため、デザインの自由度がやや制限されることもあります。法的な基準を守ることが最優先であり、特に耐震基準や防火基準といった厳しい条件を満たさなければならないため、デザインに対する自由な発想が抑えられてしまうこともあります。特に個性的なデザインを希望される方には、この点が少し窮屈に感じられるかもしれません。
ただし、これは建物の安全性を確保するためには避けられないことであり、家族が安心して長く暮らせる住まいを実現するためには非常に重要な要素です。安全性とデザインのバランスをしっかりと考え、建築士と協力しながら理想の家づくりを進めていくことが求められます。

2. 設計士とは
2.1 設計士の概要
次に、「設計士」について見ていきましょう。「設計士」という言葉はよく聞かれるかもしれませんが、実際には正式な資格名ではありません。設計士は、建物やインテリアのデザインを手がける専門家を指す場合が多く、法的な資格を必ずしも持っているわけではありません。しかし、設計士は主にデザイン面でクライアントをサポートし、住宅や商業施設、特にインテリアデザインやリノベーションを得意としています。彼らの提案は、建物全体のデザインだけでなく、生活空間の細部にまでわたり、クライアントの要望に合わせて柔軟に対応することが可能です。
設計士の最大の特徴は、法的な規制に縛られることが少なく、デザインに対して非常に自由度が高い点です。クライアントの個別のニーズやライフスタイルに応じて、クリエイティブなアイデアを取り入れながら、オリジナルで個性的なデザインを実現することができます。特に、住宅のリノベーションや店舗の内装デザインを希望する方にとって、設計士の提案は非常に魅力的です。
2.2 設計士のメリット
設計士に依頼する最大のメリットは、デザインの自由度が非常に高いことです。建築士のように厳しい法的な規制に縛られることが少ないため、クライアントの希望に応じて柔軟なデザイン提案を行うことができます。たとえば、家全体の動線を工夫して生活をより快適にしたい、リビングを広く見せたい、キッチンを家族の集まる場所にしたいといった具体的な要望に対して、設計士はそのアイデアを最大限に活かした設計プランを提供します。
設計士は特定の分野に特化していることが多く、特にインテリアデザインやリノベーション、店舗のデザインにおいては、専門的な知識と経験を活かしてクリエイティブな提案を行います。クライアントのライフスタイルや好みに合った空間を作り上げることが得意であり、住まいや店舗の雰囲気を大きく変える力を持っています。また、建築士に比べてコストが抑えられることが多いため、限られた予算内でおしゃれで機能的なデザインを実現することが可能です。設計士との家づくりは、特にデザインやインテリアにこだわりたい方にとって最適な選択肢と言えるでしょう。
さらに、設計士は特定のテーマやスタイルに特化していることが多く、たとえば「北欧風のシンプルなインテリア」「ヴィンテージスタイルのリノベーション」など、個々のデザインに対するこだわりが強い場合には、設計士とのコラボレーションが非常に効果的です。自分たちの理想をしっかりと反映した、世界に一つだけの空間を作り上げることができるでしょう。
2.3 設計士のデメリット
一方、設計士に依頼する際のデメリットもあります。設計士は法的な資格を持っていない場合が多いため、建築基準法や耐震基準といった法的な知識が不足していることがあります。特に、大規模な建物や法的な規制が厳しいプロジェクトにおいては、設計士単独では対応が難しく、建築士との連携が必要になることが一般的です。設計士がデザインを担当し、建築士が法的な基準を満たすための調整を行うことで、両者の得意分野を生かしたプロジェクトが成功に導かれることが多いです。
また、設計士はインテリアデザインやリノベーションに強みを持つ反面、建物全体の設計や、構造的な部分についての知識や技術が不足していることもあります。特に複雑な建築物や大規模なプロジェクトでは、設計士だけでは対応が難しい場合があり、その場合には建築士や他の専門家との協力が不可欠です。依頼するプロジェクトの内容に応じて、設計士と建築士の役割分担を明確にし、適切な専門家に依頼することが重要です。

3. 建築家とは
3.1 建築家の概要
「建築家」という存在は、デザインに対して深い感性を持ち、建物を一つの作品として創り上げること、さらには街に対しての調和、歴史性、社会性をも重視する専門家です。多くの建築家は建築士の資格も持っていますが、建築家の役割は、単に法的な要件を満たすだけでなく、クライアントのライフスタイルや価値観を反映した空間作りをすることにあります。建築家は、クライアントの要望を細かくヒアリングし、その人にとって理想的な空間をデザインすることが非常に得意です。
建築家が提供するのは、単なる建物の設計ではありません。空間全体のデザインを一貫して行い、外観から内装、さらには家具や照明の配置に至るまで、トータルな視点でデザインを行います。そのため、建築家が手掛ける家は、住む人にとっての「作品」としての家になるともいえます。建築家との家づくりは、特にオリジナルのデザインや独自のライフスタイルを重視する方にとって、大きな魅力を持っています。
3.2 建築家のメリット
建築家に依頼する最大のメリットは、何といってもそのデザイン力です。建築家は、クライアントのライフスタイルや価値観を反映したオーダーメイドの家づくりを提案してくれます。クライアントの細かい要望を聞き取りながら、それを家全体のデザインに落とし込んでいくため、建築家が手がける家は、まさに住む人の個性やライフスタイルを映し出した空間になります。外観だけでなく、インテリアや外構・庭、さらにはあかりプランや素材の選び方まで、一貫した美しいデザインを提供してくれるのが建築家の強みです。
建築家は、単なる機能的な住まいを作るだけでなく、その住まいに住むことで、日々の暮らしがより豊かになるような空間を提供することに力を注ぎます。そのため、住む人にとっては、家そのものが毎日の生活を彩る一つの作品として感じられるでしょう。建築家とともに作り上げる家は、他にはない特別な空間であり、住む人にとって長く愛される住まいとなることが期待されます。
3.3 建築家のデメリット
一方で、建築家に依頼する際にはコストが高くなることが避けられません。オーダーメイドの設計や、こだわりの素材を使用することにより、設計費用や施工費用が増加することがあります。さらに、建築家は非常にクリエイティブな視点を持っているため、クライアントのイメージと異なるデザインが提案されることもあります。こうした場合、クライアントと建築家の間で意見のすり合わせが必要となり、時間や手間がかかることがあります。
しかし、これらのデメリットを乗り越えることで、建築家が提案する住まいは、他にはない特別な空間を実現することができます。建築家との家づくりは、長期的な視点で見たときに、生活そのものに大きな価値をもたらすことが期待できるため、クライアントの理想を形にするための大きな可能性を持っています。

建築家との家づくりの魅力
そんな建築家との家づくりは、一生に一度の特別な体験です。建築士や設計士に比べ、建築家はより個別的でパーソナルな提案をしてくれます。クライアントのライフスタイルや価値観を丁寧に反映させ、その結果、世界に一つだけのオリジナルな家が完成します。
もちろん、建築家に依頼することで、コストや時間がかかることは避けられませんが、その結果として得られる住まいは、何にも代えがたい特別なものです。建築家は、住む人の生活を豊かにし、長く愛される住まいを作るために尽力します。そのため、建築家との家づくりは、単なる建物を作る以上の価値をもたらし、住む人の人生に新たな彩りを添えることでしょう。
建築家との家づくりは、まさに「夢の実現」であり、世界に一つしかない住まいを作り上げるための、最もパーソナルで特別なプロセスです。将来に向けての新しいステージをスタートさせるための最高の選択肢として、建築家とのコラボレーションは、かけがえのない体験となると思います。