コラム

2024.04.29

私の好きな場所2【river brew coffee】

前回のコラムがOBの方々に意外と好評で、嬉しくて調子に乗った小林です。今回の建物探訪は、一宮市からは少し遠出して、愛知県岡崎市にあるカフェ【river brew coffe】さんをご紹介します。

こちらは、弊社が建築家とつくる家づくりをおこなう際によくお世話になっている、田辺真明先生が設計された店舗併用住宅になります。(田辺真明先生のHPはこちら)乙川沿いの閑静な住宅街を抜けた角地に突如として、小高い丘の上にあらわれる幾何学図形を組み合わせたような特徴的な外観。屋根のかかった階段アプローチ部分を段数を2つ飛ばしてベンチのように設え、テイクアウト用の待合スペース、テラス席など、一目見ると得体のしれない複雑に絡み合いながら不思議と遊びこころがある空間となっています。ピーラー(米松)素材とライトグレーの吹付素材を基調とした半屋外空間が建物をL字に囲んでいるので、中は結構コンパクトな空間ですが大きく見えます。※毎年、2月下旬頃から、アオイサクラが咲きとてもきれいですが、今年もついついタイミングを逃してしまい残りわずかな葉桜を愉しみました。

こちらは、もともとは奥様が切り盛りされていましたが、とても人気店になって今回伺った時はご主人様もお手伝いされていました。今回は家族でお邪魔しましたが、同じ子育て世代ということもあって、営業時間は10~15時、土・日・月がお休みという珍しい営業形態。これもお子様との時間を大事にされているからこそ。コーヒーをはじめ素材にこだわった多彩なスイーツに目移りしてしまいます。前回は“無農薬レモンのレモンケーキ”を頂いたので、今回は“平飼い卵のプリンエスプレッソ”を頂きました。もともと病院で働かれていたご経験から、病にかかる前に食べるものから健康でありたいとの思いから、使われている材料にもこだわって卵は平飼い卵、果物も農家さんと提携されて無農薬で手間ひまかかった素材を大事にされたものでつくられています。コーヒーもじっくりと手間暇かけて入れてくださっているので、とても心地よい苦味とすっきりとした酸味が特徴でとても飲みやすく奥深さを感じます。

建物は敷地にもともとあった高低差を活かした設計で造成を最小限に抑えた配置計画としており、木造2階建てながら、丘の上に建つおおらかなボリューム感が特徴です。ガルバリウム鋼板横葺きでありながら、板金同士のジョイント、端部の納まりが美しい!幾何学的な屋根形状がより際立ちます。板金職人さんの苦労が滲み出ています。。。いい仕事されていますね。そして軒先を見るとあえての樋なし。。。これも屋根を美しく魅せています。ただし、雨水排水はしっかりと計画されており、雨が垂れる部分には部分的は砕石敷きにして、排水経路を確保しており、植栽を傷めないように工夫されており、これぞ機能美、建築家デザイン・田辺節が効いたデザインです。

室内は川沿いに開けた北側の採光が室内にとても柔らかい光をもたらしてくれます。隣地境界上に目隠しのガビオンを設けており、それがさらに北への視線を促し、内外の連続性を強調しています。(ちなみに、ガビオンの豆知識ですが、ガビオンは鉄籠に割栗石などを敷き詰めていくものですが、ある程度高さがある場合、石の重みで鉄籠が外に孕むので要注意です!こちらはその辺りをケアして軽石を敷き詰める計画にしていることで、重量感はありつつも、歪みのないきれいなフォルムのガビオンに仕上がっています。)

室内は赤みがかったラワンベニヤ(通常あるはずのベニヤの刻印は削って消すなどのこだわりようです)と外部仕上でも使われているピーラーが内部でも使われており、絶妙な木質感の統一がされており、さらに内外の境界が曖昧で空間の広がりを感じます。

造作の木製サッシと柱、あたかもガラスが存在しないかのように絶妙な納まりがきれいです。特に柱とモルタルとの取り合い、きれいに仕上がっていて惚れ惚れします。化粧垂木も内外で連続して、ダイナミックな空間を強調しています。シンプルだけど、統一感があって柔らかい木を基調としてるんだけど、凛としたデザイン性がある空間です。モルタル床のひび割れもいい感じに表れていて時間の経過を刻むいい表情をしていました。

オープン前の完成見学会にもお誘い頂いたのですが、こうして人が使いこむことで空間に彩りが染み渡っていく感じがいいですね。お勘定の際にオーナーご夫妻とお話させて頂いたのですが、田辺先生の設計のこだわりや住みやすさなど、施主談義に花が咲きました。(北名古屋モデルハウスが完成した際にはぜひ、お越しになってください。)最近はひっきりなしでお客様が往来しており、この日も大繁盛していました。

窓際で美味しい珈琲とスイーツを頂きながら、ただただぼーっと川沿いの風景を眺め、至福の時を味わう。。。贅沢な時間です。建物の姿がかっこいいだけじゃなくてそこに人のアクティビティが加わることで、魅力がぐっと増すそんな建物が好きです。百聞は一見に如かず。ぜひ、この時間と空間を味わってみてください。

 

田辺先生に設計して頂いたお家の建築実例もよかったらご覧ください。

・薪ストーブで暮らすワンルームの家

・高台にたつ家

・空からの光をいかす中庭のある家

・薪ストーブとロフトのある平屋