コラム
育てる、名作家具。
建築巡礼、家具デザイン大好きなスタッフの小林です。
昨年、日本でも映画『アアルト』が上映されました、フィンランドの建築家と言えばアルヴァ・アアルト。アアルトは建築だけでなく、数多くの家具のデザインもしており、その代表作のひとつがスツール60です。シンプルな形状ながら、さまざまな名作椅子の中でも多目的で比較的安価なモデルというのが特徴かと思います。バーチ材にラッカー仕上げやリノリウム仕上げなど、座面の種類の違いが色々とあるラインナップで、スタッキングして収納できるのも魅力のひとつです。その中でも、90周年モデルの2つのスツールがとても面白いつくりだったので、ご紹介したいと思います。スツール60って正直そこまで形状が特徴的なデザインということもなく、なんとなくMUJIとかにありそうな普通のデザインだな、という印象もあります。ただ、今回実際に手にしてみて思ったことは随所にこだわりが感じられるシンプルだけど奥深いデザインだと思います。
スツール60についての基礎知識はこちら、、、artek正規品証明書によると下記のような説明書きがされていました。
1933年にアルヴァ・アアルトによってデザインされた「スツール60」は、現在まで継続的に生産され続けています。フィンランドの森林で生まれ育った白樺の無垢材を使用してフィンランドの工場で製造されるスツール60は、椅子として、サイドテーブルとして、ディスプレイ用スタンドとして、あらゆる用途に応える汎用性があります。さらに、暮らしとともに年月を重ねることで「パティナ」と呼ばれる豊かな痕跡を刻みながら味わいを増していきます。90年前に生まれ、90年絶えることなく生産されているスツール60は、これからもタイムレスな美しさを宿す本物のデザインであり続けます。
…タイムレスな美しさ、素敵な表現ですね。あと個人的には脚が3本というのもシューメーカーにもにたシンプルなイスとしての構造美もあって好きです。
あと、下記のHP内にある“「スツール 60」ができるまで”の動画が素材から加工までの一連の流れが美しい映像で見応えがあります。
https://www.artek.fi/jp/products/%E3%82%B9%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB-60
まず一つ目は、Kontrasti(コントラスティ)。
文字通り部材同士のカラーコントラストを際立たせた一品です。座面の小口面に見える継ぎ目がまわりより濃い輪郭線のようになっていたり、脚の部分に見られる特殊な曲木加工技術「L-レッグ」にも基材より濃いバーチ材が組み込まれています。モンドリアンのオマージュのような抽象絵画にも似た表情が特徴的です。色相ごとの着色によるカラーバランスでなく、あくまで木材にこだわった色味の違いが趣があって、それがこのスツールの構造美をあらわすデザインにもなっていて、美しいデザインです。
もうひとつは、Loimu(ロイム)。
こちらは無塗装品でオイル塗装セットが入った珍しい1品。自分のイスはちゃんとメンテナンスしてね。というメッセージが詰まった変わり種。自分で手を入れてこそイスとなる。その心意気がいいですね。ちなみにロイムはフィンランド語で「炎」という意味らしいです。木目なのに炎って、、、でも、その表情は、確かに。独特な白樺材のトラ杢目が通常のフィンランドバーチ材の表情とは異なってますね。
さて、組み立てていきます。梱包はこちら、まず思うのが、このコンパクトさでイス?という疑問です。梱包にも高いデザイン性を感じます。
さて、梱包をほどいて中身を見ていきます。
部材はこれだけ、とてもシンプル。組立方もとてもシンプル。なんかIKEAみたいなイラストですね。脚を1本ずつ、座面に留めつけていきます。ビスも3点支持で微妙に位置もずらしている感じが3脚とのつながりを感じられてこだわりを感じます。
あと2本も同様に留めつけて、、、
完成です。10分もかからず終わりました。
木目のグラデーションと自然な木目と人工的な直線と曲線の組み合わせがエッジが効いてていいですね。Loimu(ロイム)も組立は同様です。
組立終わったので、塗装をしていきます、オイルはLivos(リボス)が入っていました。オスモとは違ってトロっとした液体で、比較的に扱いやすい塗料だと思います。
無塗装品なので少しケバケバしていますので、付属のペーパーでていねいにサンディングを行い、塗っていきます。乾いているので割とぐんぐんオイルを吸っていきますので、十分に隈なく潤いを与えて拭き取って仕上げていきます。
ちなみに、無塗装品と塗装品の比較はこちら。(写真はヤマトヤワイズカーサさんのショールーム。社長自らオイル塗装をされたそうです、笑。)
これから生活の中で使い込むことでさらに進む経年変化を楽しんで行きたいと思います。
スツール60は他にも建築家の田根剛さんが出かけた「Sleeping Beauty-眠れる森」という90脚限定のシリーズは無塗装のスツールをさまざまな土の中に眠らせることで、土の性質によって変わる色味をもったオリジナルのスツールなんてものもあります。すごいコンセプトです。イスの糠漬けみたいなものですね。
90周年モデル「スツール 60 Sleeping Beauty − 眠れる森」
ひとつのカタチでありながら、いろんな表現ができるというのもいいデザインのもつポテンシャルの高さだと思います。
我が家では普段はベッド横のキャビネット代わりに、急な来客でイスが足りないときのサポート役として活躍してくれると思います。
身近にお気に入りのデザインを置くことで、暮らしに豊かさを。