コラム
建築家が建物をデザインする際の考え方
河合工務店では、建築家の三浦直樹氏をゲストに迎え
「土地の魅力を引き出すプランニング:建築家座談会」を開催しました。
建築家は建物をデザインする際にどのようにアイディアを形成し、計画を進めるのでしょうか?
三浦直樹氏が実際に設計した住まいを例に、座談会で語った「建築家の設計手法」についてご紹介します。
光庭からつながる家
敷地状況
敷地は南側が道路に接した、両サイドと北側も住宅があります。
奥行きに比べると間口が狭いこの敷地は、駐車スペースが住宅の配置にかなり影響してくるんですね。
南側に面した道路沿いに駐車場、その奥に家を建てることになった場合、敷地には庭が欲しいと思うでしょう。
そして、南側からの光を家の中に取り入れたいと思う場合、家の南側に庭を作ってしまうと、
建物が完成した際に、庭に対して無防備な窓ができてしまいます。
さらに、玄関も南側に作ってしまうと、ガチャガチャ落ち着かないファサードになってしまうと考えました。
道路に面した大きな窓というのは、一般的な建売住宅や住宅メーカーが設計する家で採用されています。
これらの南側に無防備に開かれた窓は、いつもカーテンが閉まっていることがほとんどです。
外と家の中をつなげたいのにカーテンが閉まっているというのは本来の目的から離れてしまうので、
この家は、家の真ん中から自然光を取り入れ、直射日光やその光を拡散させて室内を明るくするというコンセプトで設計しました。
外観
正面に玄関です。
車2台を停められる駐車場、家の前に樹木があります。
2階部分はかなり奥に入っていて、
南側の外観はあえて窓を設けていません。
正面から見たとき、とても落ち着いた外観です。
外壁の色は、和モダンの外壁であまり濃すぎない、薄すぎない、昔のお茶室とかそういった色に近づけたいな、という思いはありました。
部屋の配置
玄関から家の中に入って、一番奥をLDKにしています。
・中庭
これは家の中心に設けられた、光を取り入れるための「光庭(ひかりにわ)」です。
光庭に大きな窓を設けてダイニングキッチンに光を届けています。
朝は陽が射す気持ちのいい場所でご飯が食べられますね。
家を正面から見たときはとても落ち着いた外観で外に閉じていますが、奥は開いています。
リビングから光庭を通して向こうに寝室がある。
視線が抜ける窓を設けています。
・キッチン
お料理をしながらテレビを見られるような場所にキッチンを配置しました。
・ダイニング
この家は、食事をする時間がより有意義なものになるのを目指して、
ゆっくりできる家の中の一番いいところにダイニングを配置しています。
・リビング
光庭から見たリビングです。
いつも明るいダイニングに対して、「少しゆったりしたいな、あたたかい家でリラックスしたいな」という場面を考え、リビングは居心地の良い場所に配置して、夜や午後にくつろぐためのスペースとしました。
奥はちょっと暗く籠った感じにするために、天井を落として間接照明を仕込んでいます。
この家のいいところは、北側にお隣さんの塀があって向こうは見えないんですね。
その塀を利用して、裏庭のような、緑がちらっと見える場所があるといいなっていうので、1メートル角ぐらいある結構大型な窓を設けて、そこから光を入れています。
床から始まる「地窓」は立っても見えるのが足元だけなので、プライバシーが確保できますし、
地面に近い位置にちょっと見える緑は、落ち着いた雰囲気の眺めを楽しめます。
・2階
2階は最小限の子ども部屋と大型収納ですね。
最近の住宅はバルコニーやベランダを作ることがなくなってきています。
そういった場合に「洗濯物は室内干しでいいかな。ただ布団は外で干したいよね。」という人が結構いらっしゃいます。
窓の外に布団掛けをつけることもできますが、私の場合は、家の中は高気密高断熱で空気が循環しているので、こういう手すりに布団を掛けておけば十分乾いてくれるとお伝えしています。
家事動線
このお住まいは1階の面積が大きくて2階が小さいんですけど、
服のクローゼットを1階に配置したいというご要望がありました。
そこでクローゼットを1階と2階に分散させて配置する提案をしています。
1階には平日に着る普段着。
洗濯スペースのそばにクローゼットを配置して、
「洗って干してしまう」という、この洗濯動線を短縮しました。
2階は休日に着る服とか冠婚葬祭とか冬物などを収納する場所としました。
光のコントロール
廊下には目線の高さのフィックス窓を設けて、
玄関と通路の明かり取りと同時に、
窓の窓台に好きなものを飾って、楽しんでいただけるといいかなと。
窓の高さについては、日差しが一番強くなる時期と冬の時期がクローズアップされるんですけど、
日本ってそうじゃない時期の方が暑かったり寒かったりするんですよね。
この窓の場合、夏の日差しが入りすぎてしまうという問題があるので、
夏の場合はここにタープ、日差し除けをしていただいて、光をコントロールすれば大丈夫と提案しています。
光が一日中ちゃんと窓の周囲を照らしてくれるように想定していますね。
2階の吹き抜けからの採光
午前中、LDKには南東の光が光庭から入ってきますが
午後以降に光が入りにくくなるので、階段吹き抜けを利用して、2階の窓から光を落としています。
また、吹き抜けによって一階と二階がつながるので、家の中の空気が上下に抜けて循環するようになります。
家の中に「居場所」をつくる
私が家を作る中で意識しているのが「いろんな居場所を作りたいな」というのがあります。
この家は、奥のちょっとこもれるリビングや明るいダイニング、その裏側にはちょっとデスクスペースがあったり。
階段は上の窓から入ってくる光が階段下に差し込んできますので、椅子を置いて本を読んでも明るいかなとか。
4人家族で家の中にいろんなところに人がいて、それぞれが好き好きにいろんな作業をしたり遊んだりしていると楽しげだな!というようなことは意識して作るようにしています。
1982 滋賀県生まれ
2005 京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科卒業
2005-2013 横内敏人建築設計事務所
2013 三浦直樹建築設計事務所